ほか


胎児の産道通過機序

胎児が産道をどのように通過していくかは胎児の胎位胎向によって異なります。ここでは、前方後頭位による回旋機序について説明します。
第1回旋
矢状縫合を骨盤入口部の横径(最大径)に一致させる

最初は小泉門と大泉門は同じ高さであるが 前後径周囲よりも小さな小斜径周囲で骨盤入口部を通過可能するため屈位をとり小泉門が先進する


第2回旋

児頭は骨盤腔内で比較的広い骨盤濶部にいたると約90度回旋し、児の顔は母体側方から
母体後方に向きをかえる。 これは骨盤出口部が骨盤入口部と形態が異なるため、広い骨盤濶部で向きをか えている。

骨盤入口部と骨盤出口部の形態の違い


第3回旋

骨盤出口部から児の顔面が排出される機序



第4回旋

母体大腿内側をむき、躯かんの娩出にいたる



子宮膣部の成熟度による診断(ビショップスコア)
内診法により子宮膣部診察結果から分娩準備状況を確認する方法として頸管(子宮口)の開大,子宮頸部の展退,児頭の位置の高さ,子宮頸部の硬さ,子宮口の位置をビショップスコアで評価します。13点満点で9点以上で分娩が近いと判断します。

Bishop score(ビショップ・スコア)

頸管開大度 1〜2 3〜4 5〜6
展退 0〜30 40〜50 60〜70 80〜
児頭位置 −3 −2 −1〜0 +1〜
頸部の硬さ
子宮口位置


分娩進行に関わる診察技法
ホッジの平行平面との位置関係
ホッジは骨盤腔を4つに区分し,児頭先進部の下降度を表現することを提唱しました。X線撮影による骨盤の読影によく利用されます。

第1平行平面:骨盤入口面とおなじ平面
第2平行平面:恥骨結合下縁を通り第1平行平面に平行な平面
第3平行平面:両側の坐骨棘を結ぶ平面で,Station0に相当
第4平行平面:仙骨先端を含む平行平面



Dee LeeのStation



軟産道の開大機転

(1)陣痛が開始し、子宮体部の筋繊維が収縮すると子宮下部や頸管が引き伸ばされて上方に牽引される。
(2)洞筋部の筋繊維は陣痛間歇時には弛緩するが,完全に収縮前の状態には戻らず,陣痛が反復するにつれて洞筋部はしだいに厚さを増し,容積が縮小されていく(退縮)。
(3)厚くなった洞筋部と薄くなった子宮下部との境界である解剖学的内子宮口の部分は内腔に向かって堤防状にぼうりゅうし,外面に輪状の溝ができる(生理的収縮輪)。
(4)洞筋部の収縮につれて,進展管はますます薄く上方に展退するので,収縮輪が恥骨結合上第4横指径くらい(約6p)に達する頃に子宮口は全開大する



子宮頸管開大の過程
陣痛(子宮収縮)に伴って,子宮頸管は開大(開くこと)していきます。頸管開大度と時間の経過をあらわした「フリードマンの頸管開大曲線」があります。
初産婦で正常な分娩経過の場合は子宮口が約3p開大するまでに約9時間を要すると言われています。この時期を潜伏期といいます。その後,2時間程度の短い加速期を過ぎると頸管は急速に開大し極期に移行します。その後1〜2時間の減速期(やや頸管開大度の加速が落ちる時期)を経て3時間後にほぼ子宮口は全開大します。



分娩進行に関わる診察〜児頭の下降度〜
児の下降(産道の降り具合)を外診や内診によって確認する方法がいくつかあります。
頤部(児のあごの部分)の高さと児頭の下降状態

頤部の高さ
(恥骨結合上縁から)
児頭先進部の位置 児頭最大横径面
(骨盤腔の高さ)
4横指径 −3(3p上) 入口面
3横指径 −1.5(1.5p上) 濶部上腔
2横指径 ±0(坐骨棘線上) 濶部平面
1横指径 +1(1p下) 濶部下腔
+2(2p下) 峡部

骨盤腔内の触知による児頭の下降度

児頭下降部
(頭位では最大横径周囲)の位置
骨盤内壁の触知可能範囲
恥骨結合後面 坐骨棘
骨盤入口より上 全部 可能
骨盤入口面 3分の2 可能
骨盤濶部 2分の1 可能
骨盤峡部 下縁 不可能
骨盤出口部 骨盤内壁をまったく触れない